店長店長

こんにちは。
先日は小型電気炉(窯)「キルンキング160PKS」を紹介しましたが、
今日は、もう一つ、うちで使ってる「ART KILN SV-1」(アートキルンSV-1)(以下SV-1)を紹介します。

「小型電気炉」の中では最大級

SV-1は家庭用の一般電源で使用できる、いわゆる「小型電気炉」です。


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小型といえども、炉内容量は直径38センチ×高さ30センチと、
かなり広く作られているので、
よほど大きな作品でなければ焼成することができます。

先日紹介したキルンキング160PKSはガラス工芸用でしたが、
SV-1はポーセラーツだとかポーセリンアートと呼ばれる
陶磁器への転写絵付けに対応した電気炉です。

特殊なシート(転写紙)に絵柄をプリントし、そのシートを磁器に貼り付けます。
これを高温で焼くことで、シートがガラス化し、磁器の釉薬と一体化します。
この技法では焼成の過程で、シートの有機成分が焼け溶けてガスを発生するため、
炉内のガス抜きをする必要があります。
SV-1にはこのガス抜き穴が2カ所あります。

ガラス工芸用の電気炉には、ガス抜き穴がないので、
白磁への絵付け作品を作る場合は、
焼成の途中で、何回か炉の蓋を一瞬開けるなどして
炉内に発生したガスを抜く必要があるのですが、
SV-1は自然に炉内の換気ができるようになっています。
(使わない時は蓋をして穴を塞ぐことができます)

オートプログラム搭載

キルンキング160PKSは1ステップのプログラムにしか対応していませんでしたが、
SV-1はフルオートプログラム対応です。
基本プログラム10種類があらかじめ搭載されている上、
16ステップの自作プログラムを20種類登録可能です。

陶芸は不可

SV-1の最高温度は900度です。
キルンキング160PKSと同じです。

ガラスや、ポーセーラーツ・ポーセリンアートの制作では
通常、800度~830度辺りまででしか焼成しないので、
これらの作品作りに不自由はしません。
しかし、陶芸はできません。
陶芸は1200度~1300度で焼成する必要があるため、
SV-1では対応できません。

側面全周囲に熱線があり加熱効率良し

八角形の円筒型の内部は、
側面全周に熱線が3段に配線されています。

全周に熱線があるため炉内が均一に加熱されます。
SV-1を導入する際に、
ライバル機種「KCG-31 彩火」と迷ったのですが、
決め手となったのはこの全周熱線です。
「KCG-31 彩火」も家庭用電源可能な電気炉では最大級で
もしかしたらSV-1よりもユーザー数が多いかもしれない人気機種です。


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彩火は前開き扉で使いやすそうではあったのですが、
(前開きだからこそ)熱線が全周ではなく、炉内左右2カ所の壁面のみの配置です。
私の素人イメージではありますが、
加熱効率、というか、炉内を均一に加熱する性能は
全周に熱線があるほうが良さそうなのでSV-1にしました。
あくまで、私個人のイメージでの判断です。

見た目フォルムの良さや、
前開き扉で使いやすさでは彩火に軍配ですかね。

炉内が広いが故の弱点

SV-1は直径38cm×高さ30cmと広いのが魅力です。
これが家庭用電源(100V)で稼働できるギリギリの大きさでしょう。
これ以上大きくなると充分な加熱ができないと思われます。
常温から900度まで一気に加熱する時にかかる時間は
説明書に記載されているのが5時間45分です。
しかし、実際に稼働させ、時間を計ってみたら7時間6分かかりました。
説明書にある時間よりも1時間21分も余計に時間がかかりました。

説明書に記載されている時間は、
100Vの電力が安定供給されている条件下での時間だと思います。
使用条件によっては時間が変わる旨の注意書きもあります。

一般家庭用電源は100Vとされていますが、
実際は多少誤差があり、電気事業法では101V±6Vが正常値とされています。
つまり、95V~107Vの間の電圧が供給されていればOKという事なので、
電力会社が管理する電線などの設備や、
家庭内の電気機器使用状況などの条件によっては
電圧が100Vよりも下がっていることがあるのです。

うちの電圧をテスターで測ると、
通常は100~103V近辺で推移しているのですが、
SV-1をフルパワーで稼働させると95V辺りまで下がりました。
瞬間的ではありますが、93V台まで下がることもありました。

電気炉の販売店に問い合わせたところ
「5V違えば、加熱時間にかなり差が出る」とのことでした。
1300度付近まで上げる陶芸用の窯だと、
電圧が95Vではいつまで経っても1300度に到達しないそうです。

SV-1は900度が上限で、陶芸用電気炉より低温のため、
電圧が下がってもなんとか900度まで到達するものの、
かなりの時間を要することになります。

電圧低下の対策

電圧低下で炉内温度上昇時間が長くなるとしても
おそらくは、ポーセラーツ・ポーセリンアートでは
さほど影響はないかもしれません。
これらの作品は500度辺りまでは、150度/hくらいの
ゆっくりと加熱することがセオリーですので
作品の出来にも影響は少ないと思われます。

ですが、ガラスフュージングなど、ガラスを溶かす場合、
700度~770度辺りの温度は「失透帯」と呼ばれ、
この温度帯が長時間になると、
ガラスが透明度を失うことがあるのです。
作品の出来に大きく影響するので
この温度帯を素早く通過させたいわけです。

700度→800度の加熱を素早く行うためには
キルンキング160PKSのような、
少し小さめの炉の方が有利です。
ただし、小さい炉は一度にたくさんの作品が作れないので
悩ましいところではあります。

なんとか、SV-1でもスムーズな加熱ができないものでしょうか。
手っ取り早いのは昇圧トランスを使うことです。
低い電圧を100Vに整えて出力したり、
電圧を10%~15%アップさせたり、
いろいろなタイプの製品があります。

うちでは
低電圧→100V
100V→115V(15%アップ)
に対応したトランスを使用しています。
導入のきっかけは電気炉販売店からのアドバイスでした。
1300度まで上げる陶芸用電気炉には必須機器だそうです。

使用方法は簡単で、
トランスの電源コードを家庭用コンセントに差し込み、
電気炉の電源コードをトランス側のコンセントに差し込みます。
つまり、延長コードを使うように、コンセントと電気炉の間にトランスを挟む形です。

普段は「低電圧を100Vにする」モードで使用しています。
これにより、電圧が安定するので、
説明書記載の時間と、ほぼ同じ時間で焼成できるようになりました。

そして、ガラス作品などで、失透帯を素早く通過させたいときには、
「100V→115Vにアップ」モードを使います。
正確には現在電圧を15%アップするモード(※1)です。
これを使うと説明書記載の時間よりも大幅に時間短縮が可能です。

700度から800度に上昇する時間の実測値で
100Vモードで場合56分かかるところ、
115Vモードで35分でした。

ただし、電圧が高すぎて電気炉にダメージを与えてしまう危険もあるため、
使用は最小限にとどめています。(※2)

初期費用はかかるが買う価値あり

ガラス工芸や、ポーセラーツ・ポーセリンアートをこれから始めたい人で
電気炉に迷っていたら、SV-1はお勧めの製品です。
初期費用は高めですが、炉内が広いので一度にたくさんの作品を作れるし、
直径30センチ以上のお皿、高さのある花瓶などの絵付けも可能です。
最初は小さい電気炉で、小物を作ることで満足していても、
次第に大きな作品を作りたくなるものです。
なので、
お金と設置する場所の確保などの環境が許せば大きな電気炉を導入しておけば間違いないです。
SV-1は一般家庭用電源で室内設置OK、広い炉内体積で、
電気料は1回の焼成で120円~130円程度(電力の契約内容により変動します)。
冷却ファンにより稼働中でも表面は熱くなりませんので、
とても使いやすい電気炉です。
これから電気炉の導入を検討している人は、候補の一つに加えてみてください。


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店長店長

今日も「千花」に来てくれてありがとうございます。
SV-1を導入してしばらく経ちました。
毎日順調に稼働しています。

でも最近、陶芸にも手を出したくなってきました。
1300度対応の電気炉にすれば良かったと、
若干の後悔も・・・・

※1
電気炉がフル稼働すると、
うちの環境では電圧そのものが94~95Vあたりまで下がるので
(コンセントにテスターを差し込み計測)
115Vモード使用でも実際は
95V×1.15≒108~109V 付近
となります。

※2
昇圧トランス使用にはリスクが伴います。
特に115Vモードは一般家庭用の上限107Vを超えた電圧になるため
電熱線の早期劣化、電気炉故障など、その他重大な事故の原因となる可能性があります。
リスクがあることを承知の上、自己責任で使用してください。
本記事は昇圧トランス使用を推奨するものではありません。

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